蛋白質の立体構造を調べ、その働きを本質的に理解し、その情報を役立てる研究


If you want to understand function, study structure.”  Francis Crick (1988)

「機能を理解したければ構造を研究せよ。」  フランシス・クリック(1988)

・ はじめに 〜 一芸でも秀でよ

蛋白質はたった20種類のアミノ酸の組合せにより構成されているにも関わらす、実に複雑な機能を発揮しています。蛋白質のこのような多様な機能を本質的に理解するにはその立体構造を詳細に知ることが不可欠です。蛋白質などの生体高分子の働きを、原子レベル解像度の立体構造に基づき化学や物理のコトバで言い表すだけでなく、蛋白質ならではの化学や物理を明らかにすることが構造生物学の面白さです。私たちはX線結晶構造解析を通して、蛋白質の構造と機能の本質的な理解を目指し、その生産や精製などの技を極めるため日々ストイックに勉強し研究しています。師のたまわく、「なんでも出来る奴は、なにも出来ない奴。」 これからは、誰もできない困難な課題を突破できる卓越した専門性が必要になります。平均的な能力で扱える課題は、大したものは残っていない世の中ですから。


・ 膜蛋白質の構造生物学

細胞膜は細胞にとって単なる囲いや透過障壁であるばかりでなく、物質や情報のやりとりの関所でもあり、多くの蛋白質がそこに存在し、それらは生理的に重要な役割を果たしています。
私たちの研究室では膜蛋白質を中心に、生体内で重要な働きを持つ蛋白質の立体構造解析を通してその機能を本質的に理解しようとする膜蛋白構造生物学を展開しています。膜蛋白質の立体構造解析は技術的に非常に困難な分野であることが知られていますが、私たちは果敢に挑戦を続けています。


・ 膜輸送体の立体構造と機能の解明

細胞膜を介した物質の輸送には、膜輸送体と呼ばれる膜蛋白質が重要な働きを担っています。細胞の生育に必要な物質を取り込んだり、細胞にとって要らないものや、害になるものを排出したりしています。
私たちは多剤排出トランスポーターとよばれる膜輸送体の結晶構造解析に世界で初めて成功しました(図1)。この蛋白質は、細胞から薬剤を排出し、薬剤耐性化を引き起こします。このような蛋白質はあらゆる細胞が持つ細胞レベルでの最も基本的な生体防御機構となっていることが知られています。これらは、細菌やがん細胞での多剤耐性の原因であるばかりでなく、様々な細胞機能を担っていることが近年分かってきました。マクロライド排出トランスポーター(図2)は、病原性細菌の病原性因子を分泌装置でもあることが知られています。
私たちは膜輸送体の立体構造に基づいて、分子機構、細胞機能における役割を本質的に理解することを目標に研究を進めています。

図 1 : 多剤排出トランスポーターAcrBの結晶構造


図 2 : マクロライド系抗生物質排出トランスポーターMacBの結晶構造


・ X線結晶構造解析

私たちの研究は原子レベルの解像度でタンパク質の立体構造を明らかにし、その構造を基に分子の機能解明を目指しています。
蛋白質、とりわけ膜蛋白質の立体構造解析では]線結晶構造解析が最も有力な方法のひとつです。膜蛋白質は精製や結晶化がとても難しいことが知られていますが、私たちは効率の良い精製方法や、新しい結晶化法など、結晶構造解析が困難なこれらのターゲットに挑むための技術開発も行っています。